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 染織

 

ブータンの染織の詳細は 『ブータン 雷龍王国への扉』p137ー145、 『ブータンの染と織 ー改訂版ー』を参照されたい。  

 

草木染という名称について

(一部の日本人が)ブータンの染色を草木染と称する場合があるが、草木染はその創始者によって商標登録がなされている名称である。

草木染はあくまでも創始者の作り出した方法による染色法であり、(日本のものに対する名称であって)ブータンを含む諸外国の染色に対する呼称としては適当ではない。

なお、一部ではあたかも常識のように言われている「草木染での色落ちは仕方のないこと」は、本当の草木染に関しての知識不足からくる誤った認識である。

 

「織の国」ブータン

ブータンの織物は大変高価である。手の込んだ高級品になると、準備段階を除き織作業に専念する期間だけでも、一人で織った場合には1年弱から2年の年月を要するので、当然の価格である。

ブータンの織物は伝統工芸品としてではなく、現在でも必要な物として日々進化している。今でもよい物は布の段階からオーダーするのが当たり前なので、市販品には上級品はほとんどなく、多くの場合「一般の観光客が、事前に何らかの準備をしない限り、一般的なブータン旅行中に上級品をみることはない」と考えたほうがよい。

ルンチー県コマ村にて:屋外で行われている地機タシンでの織り作業と地機用の整経作業

 

織物産地

ブータンの織物は種類によってそれぞれに産地があリ、現在でもそれらの地が主産地であることに変わりはないが、近年は産地以外でも産するようになった。

毛素材織物の主産地はブムタン周辺、野生種の絹(ブラ)織物の主産地はタシガン周辺、などの従来織物産地といわれてきた地域の出身者が都市部に居住するようになり、アパートから機織の音が聞こえてくることも珍しくはない。

 

現在のブータンでは毛素材、その他の天然素材、金属糸や化学繊維、混紡糸などが使われている。1980年代初頭でさえ、「自国産の糸を自国産の染料を使って伝統的な方法で染め、伝統的な色柄を伝統的な織りのシステムと技法で織りあげた」、という完全なブータン産織物を一般の市場でみることは難しかった。

金属糸や化学繊維、混紡糸は、現時点ではその一切を輸入している。毛素材は羊毛とヤク毛である。ブータンの羊毛産地はトンサからブムタンにかけての山岳地域である。しかしオーストラリア羊に品質面で立ちうちできず、主流ではない。

4,000m前後の高地に生きる動物ヤクの毛で織られる綾織物の代表がヤタであるが、現在のヤタの多くは羊毛で織られている。ブムタン産ヤタがとくに大切にされる。

その他の素材の中でもっとも高級とされるのが、ブラとよばれる野生種の蚕から産する紬糸である。かつてはトンサから南下したシェムガンや、東ブータンの限られた地域で産していたが、現在では多くがインドから輸入されている。

その他の素材のもうひとつイラクサは、1940年代末までは衣服としても用いられた。また袋物やブータン式の風呂敷ブンディなどにも使われたが、現在ではあまり使われていない。

 

染め

ラックの下染め剤ゼムを煮出している(奥の鍋の中の黒いモノは未調査)

かつてブータンは薬草や染料の輸出国であったが、布に関しては「織で表現を行う織の国」であり、織あげた布に模様を描いたり、絞りや絣は伝統的技法ではなく、現在使われているそれらの布はおおむね輸入品である。

ブータン織物の名称は、ヤタのように材料から命名されている物もあるが、多くの織物は使用される色の組合せによって命名されている。

伝統的な色の天然染料は、臙脂はラック、青と緑はリュウキュウ藍、黄色はウコン、赤黄色は茜、黒はクルミ、が使われる。これらはそれぞれに特定の産地と採取に適する季節があり、通常は乾燥状態で保管されている。なお現在使われている天然染料のすべてがブータン産とはいえず、インドからの輸入品も多く使われている。ブータンでの化学染料使用は20世紀初頭より始まり、現在では染料の主流になりつつある。

 

織機

ブータンで使われている織機を大きく分けると、伝統的な織機、地機・タシンとチベット伝来の高機・ティタ(テュイタ)である。

タシンは腰で経糸の張りを保持し、経糸が輪状に整経され三角形に機にかけられるため、バックストラップあるいは三角後帯織機、とよばれている。経糸の整経には輪状(環状)整経と擬似輪状(擬似環状)整経の2種類が行われているが、輪状整経のほうが古典的な方法である。

現在、地の織り方が綾織の場合は大部分がティタで、平織と浮織はタシンで織られている。タリという織物のように現在でもタシンで織られている綾織物もあるが、これは少ない例である。近年、細幅のケラ(帯)を織るために、タシンでのカード織がとり入れられている。

 

織の技法

片面縫取技法のひとつサンマ と ティマ

片面縫取り、両面縫取り、浮織、平織、綾織の技法があり、1枚の布が単独の技法のみで織られることもあるが、数種類の技法が組み合わされて1枚の布の中に表現されることもある。

華やかな片面縫取りは、表面からみただけでは精緻な刺繍にみえるが、裏を返してみるとまったく模様がでていない。

 

担い手

ブータンの染織は、かつては男性によっても行われていたというが、現在では多くが女性の手によっている。専業、主婦や他の職業との兼業、有名な織手の弟子として修業中の人などさまざまである。富裕家庭では家族専用の織手を雇用し織らせる場合もある。「娘が結婚するまでにはこれだけは揃えてやりたい」と一昔前の日本の母親たちのような言葉もでてくる。

 

染織参考書

染織・服飾に関するごく簡単な入門書としては、『ブータンの染と織 改訂版』(2001年 染織と生活社 約130ページ 日本語)を、

染織作品の写真を見ることが主眼の場合は、『ブータンの染織』(紫紅社 約130ページ、英語日本語併記)を参照されたい。なおこの和書2冊は当館トップページのamazon.co.jp にて入手可能。

染織・服飾に関する本格的な資料としては、『 From the Land of the Thunder Dragon TEXTILE ARTS OF BHUTAN 』(ISBN 0―906026―31―8 1994年 Timeless Books 約250ページ、英語)を参照されたい。

 

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